兄弟のみの相続が発生したら?おさえるべきポイントとスムーズな進め方

両親や配偶者がいない「兄弟のみの相続」が発生すると、一般的な相続とは異なる特有のルールや課題が出てきます。特に兄弟相続では、法定相続分や遺留分の権利が異なるため、親や配偶者が関わる場合とは違った対策が必要です。

多くの方が「兄弟のみで相続手続きをどう進めればいいのか?」、「兄弟間の遺産分割で揉めることはないか?」と不安に感じるのではないでしょうか。

結論として、兄弟相続には親や配偶者が関与する相続よりもやや複雑な側面があります。しかし、遺産分割協議や法定相続分をしっかり理解し、適切な手続きを踏めば、スムーズに進めることが可能です。

この記事では、兄弟相続の特徴や押さえておくべきポイントを詳しく解説し、トラブルを回避しつつ円満な遺産分割を行うための方法をお伝えします。

兄弟相続の法定相続分の基本

兄弟のみが相続人となるケースでは、通常の相続と比べて異なる法律上のルールが適用されます。まず、相続が発生したとき、法定相続人は一般的に配偶者や子供が優先となります。

ただ、もし被相続人に配偶者や子供、または親がいない場合、兄弟姉妹が相続人です。この状況では、兄弟姉妹がすべて平等に相続する権利を持つことになります。

例1:親が亡くなった際に、配偶者や子供がいない場合

この場合は、残された兄弟姉妹が遺産を分けることになります。兄弟姉妹が相続する際のポイントは、すべての兄弟が平等な権利を持っている点です。遺産の分割は、法定相続分に基づいて行われ、兄弟の間で公平に分配されることが原則になります。

例2:兄弟姉妹のうち、すでに亡くなっている兄弟がいる場合

この場合は、その兄弟の子供が代わりに相続することができます。これにより、故人の血縁関係を継続し、遺産分割が行われるのです。

事例:兄弟の一人がすでに亡くなっている場合、その兄弟の子供(甥や姪)が相続権を持つことになります。この仕組みは、被相続人と血縁のある者に相続権が優先されるため、法律上定められた重要なルールです。

兄弟が相続できる割合について

兄弟姉妹が相続する場合、その法定相続分は兄弟姉妹全員で平等に分けることが原則です。仮に、被相続人が亡くなり、配偶者や子供、親がいない場合は、兄弟が等しい権利を持って遺産を分割します。兄弟姉妹が2人なら半分ずつ、3人なら3等分されるのが基本です。

なお、兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合、その兄弟姉妹の子供(つまり甥や姪)がその人の代わりに相続することができます。この仕組みを「代襲相続」と言います。例えば、兄弟姉妹の一人がすでに亡くなっている場合、その人の子供がその兄弟姉妹の取り分を相続する権利を持ちます。

兄弟がすでに亡くなっている場合、相続権はどうなる?

前述のとおり、兄弟姉妹の一人がすでに亡くなっている場合、その兄弟の子供、つまり甥や姪が代わりに相続権を持つことができます。この仕組みは、被相続人(亡くなった方)と直接血縁関係のある親族に財産を引き継ぐためのもので、兄弟が亡くなっている場合でもその血縁関係を尊重した形で相続が進められます。

事例:3人兄弟のうち1人がすでに亡くなっている

この場合、その兄弟の子供が相続に加わり、兄弟姉妹と同じ法定相続分を受け取る権利があります。これは法的に認められているため、相続の際には全ての甥や姪も含めた遺産分割協議を行う必要があります。

兄弟のみの相続の注意点

兄弟のみの相続には、特有の注意点がいくつか存在します。その中でも重要なのは、異母兄弟も相続人となる可能性があるという点です。法律上、同じ親から生まれた兄弟はもちろん、父親または母親が異なる兄弟(異母兄弟、異父兄弟)も、相続人となる資格を持ちます。

異母兄弟も相続人となる可能性がある

法律上、兄弟には相続権が認められていますが、これは異母兄弟(父親または母親が異なる兄弟)にも適用されます。同じ親から生まれた兄弟はもちろん、異母兄弟や異父兄弟も相続人となる資格を持っています。

例:父親が再婚して別の家庭で子供をもうけた場合

この場合は、異母兄弟も相続に参加する権利を持ちます。たとえ普段あまり接点がなくても、遺産分割協議には必ず加えなければいけません。

異母兄弟が法定相続人となることで、家族関係が複雑になることもあります。異母兄弟とは、普段から交流がない方も少なくはありません。そのため、相続に関する意見が一致しにくい可能性が出てきます。特に、異母兄弟が知られていなかった場合や、連絡が取りづらい場合、相続手続きが難航することが多いです。

事例: 異母兄弟が存在していることを知らずに相続手続きを進めていたところ、突然その兄弟が現れて権利を主張するというケースがありました。このケースの場合、意見の食い違いで遺産分割協議が長引き、最終的には弁護士を紹介せざるを得ない状況にまで発展しました。

兄弟間のコミュニケーションが鍵

兄弟のみの相続では、兄弟間のコミュニケーションが非常に重要です。兄弟姉妹が複数いる場合、遺産の分割方法について意見が分かれることが多く、特に遺産が不動産や株式のように簡単に分けられないものの場合、どのように分割するかで意見が対立することがあります。

例えば、不動産の相続では、ある兄弟が不動産を相続し、他の兄弟にその分の現金を支払うという方法が一般的ですが、これには全員の合意が必要です。不動産の価値をどのように評価するか、売却するかどうかなど、さまざまな要因が絡むため、兄弟間の話し合いが重要になります。感情的な対立を避けるためにも、冷静で建設的な話し合いが必要です。

不動産などの分割が難しい財産の取り扱い

兄弟のみの相続では、現金や金融資産は比較的簡単に分けることができますが、不動産や土地のような物理的に分けにくい財産が含まれている場合は、分割方法が複雑になります。

特に、不動産の相続では、物件を売却して現金化するか、特定の兄弟が不動産を相続して他の兄弟に現金で補償を行うかといった問題が発生します。

不動産をどのように分割するかは、遺産分割協議の中でも重要な議題です。例えば、兄弟のうち一人が家に住み続けたいと考え、他の兄弟がその財産分を現金で受け取りたいと望む場合、話し合いによって解決策を見つける必要があります。

このような場合、不動産の適正価格を査定する必要があるため、兄弟全員が納得できる形での分割が求められます。

兄弟のみの相続で得られるメリット

兄弟のみの相続には、デメリットだけではなくいくつかのメリットが存在します。兄弟だけが相続人となることで、手続きが比較的シンプルになり、親や配偶者が関与する相続よりもスムーズに進むことが期待できます。

相続人が限定されているため手続きがシンプル

兄弟のみの相続では、相続人が兄弟姉妹に限定されるため、遺産分割協議がシンプルに進むことも多いです。配偶者や子供がいる場合には、彼らの権利や意向を尊重しなければならず、遺産分割協議が複雑化することがよくありますが、兄弟のみであれば、話し合いの人数が少なく、合意に至りやすくなります。

例えば、相続財産が現金のみの場合、法定相続分に基づいて簡単に分割することが可能です。兄弟全員が同意すれば、速やかに遺産分割を終えることができ、相続手続きがスムーズに進みます。

血縁関係が近いことでトラブルが少ない可能性

兄弟間は血縁が非常に近い親族であるため、他の親族よりも信頼関係が強い場合が多く、相続に関するトラブルが少ない場合も実際多いです。特に、兄弟間で事前に話し合いを行っている場合や、信頼関係がしっかりしている場合は、遺産分割に対する不満が少なく、手続きについてもスムーズに話し合いを進められている方もいます。

例えば、兄弟姉妹が小さい頃から互いに助け合ってきた関係であれば、遺産分割についても公平かつ円満に進めている兄弟の方もいます。このように、兄弟のみの相続では、親しい関係性がトラブル回避の最大の要因となることがあります。

手続きの迅速化が図れる場合

兄弟のみの相続では、相続手続きが迅速に進められることが期待されます。兄弟間で協力して遺産分割協議を進めることができれば、相続税の申告や遺産の処理がスムーズに行われ、結果的に手続き全体が短期間で終わることが多いです。

特に、相続財産が現金や金融資産である場合、分割方法がシンプルであるため、短期間で合意に至り、速やかに相続手続きを完了することが可能です。これは、兄弟が協力して手続きを進められる場合に限られますが、迅速な対応が可能なケースが多いのも兄弟相続のメリットです。

兄弟のみの相続財産の分け方の事例

兄弟のみの相続では、遺産の内容によって分け方が異なります。特に、現金や不動産、有価証券など、財産の種類によって最適な分け方を選ぶ必要があります。

現金・金融資産を分ける場合

現金や預貯金、金融資産が相続財産の大部分を占める場合、遺産分割は非常にシンプルです。兄弟間で法定相続分に基づいて平等に分けることができるため、複雑な話し合いを行う必要がありません。

例えば、相続財産が主に現金や銀行預金であれば、各相続人が法定相続分に従って口座から引き出すことで、相続手続きを迅速に終えることができます。このような場合、兄弟間でトラブルが発生する可能性も非常に少なく、短期間で相続手続きが完了します。

不動産の共有や売却による分割方法

不動産が相続財産に含まれている場合、現金とは異なり、分割方法がやや難しくなります。不動産をそのまま物理的に分けることはできないため、兄弟間で話し合い、売却して現金化するか、特定の兄弟がその不動産を相続するかを決める必要があります。

例えば、実家の家が遺産に含まれている場合、兄弟の一人がその家に住み続けたいと考えている場合があります。その場合、他の兄弟に対して現金で補償する形で相続を行うことが考えられます。このように、不動産の相続では兄弟全員の同意が必要であり、十分な話し合いが求められます。

有価証券や株式の分割方法とリスク

株式や有価証券が相続財産に含まれる場合、その評価が難しくなることがあります。株式は市場の変動によって価値が変わるため、相続時点での評価額に基づいて分割する必要があるためです。

たとえば、兄弟の一人が株式を相続し、他の兄弟が現金や他の資産を受け取る形でバランスを取ることが一般的です。ただし、株式の価値は将来的に変動する可能性があるため、分割方法について慎重に話し合う必要があります。相続時点での評価額が重要なため、適切な情報を収集しておくことが重要です。

兄弟だけでできる相続手続き

兄弟のみで相続手続きを進める場合、いくつかの手続きは自分たちだけで完了させることが可能です。ただ、特定の手続きでは限界があるため、そこは専門家のサポートを得ることでより迅速に手続きをすすめることが可能です。

遺産分割協議の進め方

遺産分割協議は、兄弟全員が話し合い、相続財産をどのように分けるかを決める手続きです。兄弟間で合意が得られれば、遺産分割協議書を作成し、それに基づいて手続きを進めることができます。

遺産分割協議書は、相続手続きを進めるために非常に重要な書類になります。

兄弟間でスムーズに話し合いが進む場合、弁護士や司法書士を介さずに遺産分割協議書を作成することも可能です。しかし、話し合いが難航する場合や相続財産が複雑な場合は、専門家の助けを借りることでより正確にかつ早く手続きを進めることができます。

相続税の申告や支払い

相続税の申告や支払いも兄弟だけで行うことが可能です。相続財産の評価額を算出し、相続税額を計算して税務署に申告を行います。ただ、相続税の申告期限は相続開始から10か月以内であるため、スムーズに進めることが求められます。

相続税の計算は、財産の種類や金額に応じて複雑になることがありますが、税理士を介さずに兄弟だけで行うことも可能です。特に、相続財産が少額である場合は、兄弟間で協力して相続税の申告を終えることができるでしょう。

法的手続きで必要な専門知識とサポート

不動産の相続登記や名義変更など、法的手続きでは専門的な知識が求められることが多いです。相続登記を怠ると、不動産の売却や管理に支障をきたす可能性があるため、早期に手続きを完了させることが重要です。

兄弟だけで相続登記を行うことも可能ですが、手続きが複雑な場合は司法書士のサポートを得ることを推奨しています。司法書士は、必要な書類の準備や申請を代行してくれるため、手続きを円滑に進めることができます。

専門家に任せるべきポイントとは?

兄弟相続をスムーズに進めるためには、司法書士に相談する場面がいくつかあります。特に、不動産の相続登記や遺産分割協議書の作成は、専門家のサポートを受けることで円滑に進めることが可能です。

司法書士に依頼できる手続きとその重要性

司法書士は、不動産の相続登記や名義変更など、法的手続きを専門とするプロフェッショナルです。相続手続きにおいて、不動産の相続登記は特に重要な手続きであり、これを怠ると将来的にトラブルの原因になる可能性があります。

例えば、兄弟の一人が不動産を相続する場合、その不動産の所有権を正式に相続人に移転するための手続きが必要です。司法書士に依頼することで、手続きを正確に進めることができ、後から法的な問題が発生するリスクを回避することができます。

相続登記や名義変更の手続きの流れ

相続登記や名義変更の手続きは、法的に非常に重要なものであり、正確に進める必要があります。相続人全員が納得した形で不動産の所有権を移転するためには、正しい書類を作成し、申請を行う必要があります。

司法書士は、この手続きをサポートし、遺産分割協議書の作成から登記申請までを一貫してサポートしてくれるため、相続人にとって大きな助けとなります。

司法書士に相談すべきタイミングとは?

司法書士に相談するタイミングとしては、遺産に不動産が含まれている場合や、遺産分割協議が複雑になると予想される場合が挙げられます。不動産の相続登記は法律上の義務であり、これを怠ると不動産の売却や利用に支障をきたす可能性があります。

また、兄弟間での話し合いがうまく進まない場合や、遺産の分割方法について専門的なアドバイスが必要な場合も、司法書士に相談することが推奨されます。司法書士は中立的な立場からアドバイスを提供し、円滑な相続手続きをサポートしてくれます。

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