弊所に相続で相談にいらっしゃるお客様の中には、お亡くなりになった方(被相続人と言います)が、
駐車場やアパートなどの収益物件の所有者だったというケースがよくございます。
安城市にお住まいのBさんも、亡くなったお父様Aさんが収益物件をお持ちで、「賃料収入の取り扱いについて」ご相談にいらっしゃいました。
なお、
Aさんの相続人には
子B・C、
また、Aから収益物件を賃借している方をD(賃料は毎月20万)とします。
(1)この問題を理解するためには、前提として、「①債権」「②可分債権」について理解しておく必要がありますので、以下、順に説明いたします。
①「債権」とは
特定の人に対して特定の行為や給付(物などを与えること)を請求できる権利のことです。
今回ですとAが賃借人Dに賃料を請求できる権利を有していますので、Aは債権(賃料債権)を持っていたと言えます。
②「可分債権」とは
その名の通り、分けることのできる債権です。可分債権の典型的なものは、金銭債権です。
たとえば、100万円の債権があったとした場合、50万円と50万円の請求権に分けることができます。
「1個の給付が、分割して実現することのできる給付」だと言えます。
したがって、金銭債権は可分債権です。
今回の設定ですと、賃貸人Aは賃借人Dに対し、毎月20万の金銭を請求できる権利を持っていたわけですので、Aは可分債権を有していたと言えます。
ちなみに、可分債権の反対概念として、不可分債権があります。これは、分けることができない債権のことです。
例えば、Aさんが亡くなる前に車を購入していて、その車の引き渡しが完了していなかった場合、車は前方半分と後方半分のように分けることができませんから、不可分債権となります。
以上より、「被相続人が可分債権を持っていた場合に、相続手続きにおいてどのように処理されるのか」が分かれば、収益物件から発生する賃料を相続手続きにおいてどう扱うべきかが分かることとなります。
これについては、①遺産分割協議成立前・②成立後に分けて考える必要があります。
(2)ケース毎の取り扱いの違い
①遺産分割協議成立「前」の場合
そもそも遺産分割協議とは、簡単に言いますと「相続人が被相続人の財産の分け方を全員一致で決めること」です。
これにより、相続財産が個別具体的に誰に帰属するのかが確定します。
この、A死亡後~遺産分割協議成立前の可分債権については判例によって、「遺産分割を経ずとも、相続開始によって、当然に各共同相続人の相続分に応じて分割承継される」「各共同相続人が、その法定相続分に応じて確定的に取得する」とされています。(最判平成17年9月8日等)
つまり、今回の事例ですと、AとBが法定相続分2分の1ずつ(ひと月あたり10万ずつ)で確定的に取得することとなります。
②遺産分割協議成立「後」
当該収益不動産を取得した相続人が、賃料債権を取得することになります。
今回のケースで、収益物件の名義(所有権)を遺産分割協議でBが取得したとする場合は、遺産分割協議以降はBのみが新賃貸人として、賃料をDに請求できることとなります。
(3)まとめ
以上が、相続財産に収益物件がある場合の賃料の取り扱いになります。
今回のケースでは、(2)①②の処理を行いました。
なお、このようなケースでは、準確定申告が必要になる可能性もございます。
また、被相続人が金銭債務を有していた場合、「可分債務」として可分債権と同様の取り扱いがなされます。
ちなみに、預貯金債権については可分債権のように思われますが、平成28年の判例変更により、可分債権ではなく、遺産分割協議が必要ということになりました。
このように、相続で債権・債務を検討しなければならない場合は、様々な問題が想定されます。
ご自身で検討されてもはっきりせず、不安に思われた際には、お気軽に弊社にご相談ください。
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